ギャル様に粗相を叱られるM男

「座りなさい」
莉子の声が低かった。健は即座に床に正座した。
莉子はソファに脚を組んで座り、しばらく無言だった。スマホを眺めている。健はその沈黙が一番怖かった。
「今日のこと、説明しなさい」
「……彩様のお茶の温度が、適温より低く——」
「それだけ?」
健は俯いた。
「靴磨きの仕上がりが甘く、踵の部分に磨き残しがございました」
「まだある?」
健の顔が赤くなった。
「……帰宅時の玄関での出迎えが、三秒遅れました」
「三つね」莉子はスマホを置いた。「一個ならまだしも、三個は多すぎる。何が原因だと思う?」
「……気の緩みかと」
「そうね」莉子は立ち上がり、健の周りをゆっくり歩いた。「最近、将太に勝ったのが嬉しくて調子に乗ってたんじゃない?」
図星だった。健は額を床につけた。
「申し訳ございません、莉子様。おっしゃる通りでございます」
「正直でよろしい」莉子は健の前で止まった。「罰を言い渡すわよ」
「はい、莉子様」
「今夜は食事なし。明日の朝、三つ全部完璧にやり直しなさい。私が合格するまで朝食なし。わかった?」
「はい、莉子様。かしこまりました」
「それから」莉子は健の顎をそっと持ち上げた。目が合う。「次はないわよ」
「……はい、莉子様」
健の目が潤んだ。莉子はそれを見て、静かに手を離した。
「下がりなさい」
「はい、莉子様。申し訳ございませんでした」
健は深く頭を下げたまま、後退した。
莉子様のコーデ選びを必死にお手伝いするM男
「今日は彩たちと出かけるから、コーデ選び手伝いなさい」
莉子はクローゼットを開けた。健は即座に膝をついてクローゼットの前に待機した。
「まず服を全部出して並べなさい」
「かしこまりました」
健は服を一枚ずつ丁寧にハンガーから外し、ベッドに並べた。二十枚以上あった。莉子はそれを眺めながら言った。
「今日は渋谷。ギャルっぽく決めたい。絞りなさい」
健は並べた服を真剣に見た。莉子の好みは把握していた。露出感、色味、素材。
「こちらの赤のワンピと、こちらのレザー系の二枚はいかがでしょうか」
「理由は?」
「莉子様の華やかさと気品に合い、渋谷のギャルスタイルに映えると思いまして」
莉子はしばらく見た。
「悪くない。じゃあ合わせてみて」
次はアクセサリー。莉子の指示通りに種類ごとに広げた。
「ヒールはどれが合うと思う?」
健は真剣に考えた。
「こちらのロングブーツが、合うかと」
「正解」莉子は口元を緩めた。「センスが上がってきたじゃない」
「ありがとうございます、莉子様」
健は深く頭を下げた。莉子のコーデが決まる瞬間に立ち会えることが、健には何より嬉しかった。

ギャル様の雑用をこなし静かな喜びを感じる
今日も莉子から雑用のリストが渡された。
健はそれを大切に受け取った。一枚の紙に書かれた莉子の文字。それだけで健の一日が決まる。
リビングの掃除から始めた。家具の隅、棚の裏、床の木目に沿って丁寧に拭く。莉子が好きな柔軟剤の香りが漂う洗濯物を干す。浴室の鏡を磨く。自分の顔が映るほどに。
午後、莉子の私物を整理した。アクセサリーを種類ごとに並べながら、健は思った。
莉子様が選ぶもの、使うもの、全てに触れられる。それがどれほどの光栄か。
夕食の下準備。莉子の好みは全て覚えていた。塩加減、火加減、盛り付けの仕方。言われなくても動ける自分が、少しだけ誇らしかった。
六時。莉子が帰ってきた。
「お帰りなさいませ、莉子様」
莉子は部屋を見回した。白手袋をはめて確認する。棚の裏。浴室。クローゼット。
健は廊下で正座して待った。
莉子が戻ってきた。
「全部合格」
たったそれだけだった。でも健の胸が静かに熱くなった。
「夕食の準備もできております、莉子様」
「そう」莉子はソファに腰を下ろした。「今日はよくできました」
健は深く頭を下げた。
誰にも理解されない幸福が、静かに胸に広がった。

莉子様の友人の前で召使として振る舞う夜 女性上位の日常
インターホンが鳴った。
「召使、出なさい」
「はい、莉子様」
健は即座に立ち上がり、玄関へ向かった。扉を開けると、二人の女性が立っていた。莉子の友人——彩と夏美だった。二人とも莉子と同じギャル系の雰囲気だった。
健は玄関で膝をついた。
「いらっしゃいませ、彩様、夏美様。莉子様がお待ちでございます」
二人は顔を見合わせた。
「本当にいるじゃん」彩が口元を隠して笑った。
「しかも膝ついてる——」夏美が目を丸くした。
健はそのまま動かなかった。莉子のルール通りに。
リビングへ案内すると、莉子はソファで脚を組んで待っていた。
「紹介するわ。私の召使よ」
「すごいじゃん莉子」彩が笑った。「挨拶させてよ」
莉子が健に目配せした。健は二人の前で膝をついた。
「召使でございます。本日はお目にかかれて光栄でございます」
「召使って名前なの?」夏美が笑った。
「莉子様にそう命じられております」
「かわいすぎる」彩が膝を叩いた。「ねえ、お茶お願いしていい?」
健は莉子を見た。莉子が頷く。
「かしこまりました、彩様」
キッチンへ向かう健の背中に、三人の笑い声が重なった。

ギャル様のパシリとして働く日々
女性上位の日常——ギャルたちのパシリとして使われる夜
「ねえ召使、コンビニ行ってきて」
彩がスマホから目を離さずに言った。
「行き先と品物を教えていただけますでしょうか」
「近くのセブン。ポテチとグミとアイス。あとチョコ」
「かしこまりました」健は莉子を見た。「莉子様、外出のお許しを」
「許可します。三十分以内に戻りなさい」
「はい、莉子様」
玄関で靴を履こうとすると、夏美が声をかけた。
「あ、私もついでにお願いしていい? ジュースとガム」
「かしこまりました、夏美様」
莉子が追い打ちをかけた。
「私はアイスコーヒー。ミルク多め。砂糖なし」
「かしこまりました、莉子様」
外に出た。夜の街を小走りで進む。コンビニに着き、三人分のリストを頭で整理しながら商品を集める。両手いっぱいの袋になった。
二十八分後、玄関に戻った。
「ただいま戻りました、莉子様」
「何分?」
「二十八分でございます」
莉子はアイスコーヒーを受け取り、一口飲んだ。
「ミルクが少ない」
健の顔が青くなった。
「申し訳ございません、莉子様。すぐに——」
「もう一回行ってきなさい」
「はい、莉子様」
彩と夏美の笑い声が背中に刺さった。

ギャル様のお茶くみの練習をするM男

「お茶入れて。ぬるかったら罰だから♡」
莉奈がネイルを乾かしながら言った。颯が「……わかりました、莉奈様」と言って立った。
キッチンに向かった。ケトルを確認した。水が残っていた。捨てた。
新しく入れた。沸騰を待った。莉奈が「まだ♡?」と言った。
「……もう少しです、莉奈様」「早く♡」
「……沸騰させています、莉奈様」「ぬるいの嫌いだから♡」「……はい、莉奈様」
沸騰した。急須を温めた。お湯を捨てた。茶葉を入れた。お湯を注いだ。
一分待った。莉奈が「何してんの♡ 早く」と言った。
「……蒸らしています、莉奈様。一分で美味しくなります」「一分も待つの♡?」「……はい、莉奈様」「めんどくさ♡」一分が過ぎた。カップに注いだ。温度を手のひらで確認した。熱かった。持っていった。
莉奈がカップを受け取った。一口飲んだ。「熱い♡」
颯が「……申し訳ありません、莉奈様」と言った。
「罰じゃん♡」「……ぬるくはなかったですが、熱すぎましたか、莉奈様」
「熱いのも嫌い」「……ちょうどよい温度はどのくらいですか、莉奈様」莉奈が「知らない♡ ちょうどいい感じ」「……次は少し冷ましてからお持ちします、莉奈様」「覚えた♡?」
「……覚えました、莉奈様」
莉奈が少し待ってからまた飲んだ。
「あ、冷めてきた♡ ちょうどいい」「……よかったです、莉奈様」
「最初からこれで出して♡」「……次はそうします、莉奈様」「罰は保留♡」
颯が「……ありがとうございます、莉奈様」と言った。
「次ぬるかったら二倍の罰だから♡」「……次は必ずちょうどよくします、莉奈様」莉奈がお茶を飲んだ。「まあ美味しいけど♡」と言った。
颯は「まあ美味しいけど……」という言葉を、今夜一番の合格として受け取った。
熱すぎたお茶が、冷めてちょうどよくなった。次は最初からちょうどよくする。
それが今夜決まったことだった。



